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備前市の経済――製造業が支える地域産業の構造

市内総生産、事業所、雇用、工業、商業、農水産業。国と自治体の統計から、備前市の経済を読み解く。

備前市片上地区の航空写真
備前市片上地区の航空写真(2015年)。国土地理院。国土交通省「国土画像情報(カラー空中写真)」を基に作成。Wikimedia Commons経由。ウェブ用に縮小。

備前市と聞けば、まず備前焼を思い浮かべる人が多いだろう。伊部を中心に受け継がれてきた備前焼は、市を代表する文化であり、観光資源でもある。

しかし統計から経済を見ると、もうひとつの姿が浮かび上がる。現代の備前市は、耐火物をはじめとする製造業が地域経済を支える工業都市でもある。

本稿では、備前市、岡山県、国が公表した統計を使い、その経済構造を読み解く。統計ごとに調査時点と対象が異なるため、数値にはそれぞれの基準年を付した。

市内総生産は1,882億円

岡山県の「令和5年度岡山県市町村民経済計算」によると、2023年度の備前市の市内総生産は1,882億5,600万円だった。前年度の1,719億5,800万円から9.5%増加し、岡山県全体の2.3%を占めた。

第一次産業は17億7,600万円、第二次産業は958億3,500万円、第三次産業は893億1,900万円である。第二次産業は市内総生産全体の約51%に相当し、製造業や建設業などが市の経済活動の半分近くを担っている。

三つの産業の合計と市内総生産が完全に一致しないのは、市内総生産に輸入品に課される税・関税や、総資本形成にかかわる消費税などの調整項目が含まれるためである。

また、市町村民経済計算は、各事業所の生産額を直接積み上げたものではない。岡山県の県内総生産を各種の統計指標によって市町村へ配分した推計値であり、地域経済の大まかな規模と構造を把握するための指標として読む必要がある。

民営事業所で働く人の約4割が製造業

2021年6月の経済センサス活動調査では、備前市に1,694の民営事業所があり、1万5,704人が働いていた。2016年と比べ、事業所数は3.2%、従業者数は3.5%減少している。

製造業は253事業所、5,992人で、市内民営事業所の全従業者の約38.2%を占めた。次いで卸売業・小売業が445事業所、2,323人、運輸業・郵便業が135事業所、2,121人、医療・福祉が117事業所、1,568人だった。

製造業は事業所数では全体の約15%だが、従業者数では約38%になる。比較的規模の大きい工場が地域の雇用を支えていることがわかる。

2020年国勢調査でも、備前市に住む就業者1万4,951人のうち、製造業従事者は4,198人、28.1%だった。経済センサスは「市内の事業所で働く人」、国勢調査は原則として「備前市に住む就業者」を数えるため、数字を直接比較することはできない。それでも、どちらからも製造業の大きさは確認できる。

工業生産の中心は窯業・土石製品

2023年の経済構造実態調査によると、従業者4人以上の製造事業所は153、従業者数は5,652人、製造品出荷額等は2,358億7,609万円だった。

なかでも窯業・土石製品製造業は77事業所、2,162人、製造品出荷額等1,255億5,875万円に達する。市内の製造品出荷額等の約53%を一業種で占めている。はん用機械器具製造業は247億2,850万円、化学工業は224億4,606万円、鉄鋼業は120億391万円、金属製品製造業は110億2,913万円だった。

「窯業・土石製品」には陶磁器だけでなく、耐火物、セメント製品、ガラス製品などが含まれる。この金額を備前焼の生産額と考えることはできない。数量面で備前市の工業を支えているのは、製鉄所などの高温設備に使われる耐火れんが・耐火物である。

備前焼と耐火物は性格の異なる産業だが、いずれも土と火を扱う。土地の資源と焼成技術が、伝統工芸と近代工業という二つの方向へ発展してきたのである。

備前市日生で水揚げされたカキ
備前市日生産のカキ(2011年)。写真 Ippei Suzuki、Wikimedia Commons、CC BY 2.0。ウェブ用に縮小。

商業の年間販売額は534億円

2021年経済センサスによると、備前市の卸売業・小売業は387事業所、従業者数1,936人、年間商品販売額534億2,600万円だった。

卸売業は60事業所、447人、283億1,500万円。小売業は327事業所、1,489人、251億1,100万円である。事業所数では小売業が圧倒的に多いが、販売額では卸売業が小売業を上回る。建築材料、鉱物・金属材料、産業機械など、製造業と関係の深い卸売取引の存在にも工業都市の特徴が表れている。

農業と漁業は規模だけでは測れない

2025年農林業センサスの概数値では、備前市の農林業経営体は223だった。2020年の311から減少しており、経営主体の縮小が続いている。

水産業については、国の海面漁業生産統計調査による市町村別集計が2018年を最後に終了した。このため、現在の備前市だけを対象とする漁獲量を同じ基準で継続的に比較することは難しい。

統計上の規模は製造業より小さいが、日生地域の漁業とカキ養殖は、飲食、観光、地域ブランドと結びついている。農林水産業の地域的な価値は、生産額だけでは測れない。

観光は文化資源と地域産業を結ぶ

備前市には備前焼、特別史跡旧閑谷学校、日生諸島、八塔寺ふるさと村など、地域ごとに異なる観光資源がある。

備前焼は窯元や販売店、飲食、宿泊とつながり、日生の水産物は市場や飲食店、カキオコなどの地域食へ広がる。大規模な集客施設だけに依存せず、伝統産業、歴史、景観、食を組み合わせる地域密着型の観光経済である。

ただし、市の統計にある「施設別入場者数」と「観光地の観光客数」は集計方法が異なる。無料施設や地域一帯への来訪者を含む場合もあり、異なる表の数字を足して「市全体の観光客数」とすることはできない。

雇用には弱さも見える

和気公共職業安定所備前出張所管内では、2024年度の有効求人倍率は0.81倍だった。2022年度の1.13倍、2023年度の1.00倍から低下している。新規求職申込件数は1,024件、就職件数は344件だった。

ただし、この管内統計には備前市の吉永町地区と三石地区が含まれない。備前市全域の雇用情勢をそのまま示す数字ではない。

市町村民所得は870億円

2023年度の備前市の市町村民所得は870億6,100万円で、前年度から14.6%増加した。内訳は雇用者報酬561億3,900万円、財産所得47億2,800万円、企業所得261億9,500万円である。

1人当たり市町村民所得は287万9,000円で、前年度から17.1%増えた。ただし、これは市町村民所得を人口で割った経済指標であり、市民一人ひとりの給与や手取り収入ではない。企業の利益や財産所得も含まれる。

製造業の強さと人口減少をどう結び直すか

公的統計から見える備前市の経済には、明確な特徴がある。

第一に、製造業、とりわけ耐火物を含む窯業・土石製品製造業の比重が大きい。第二に、運輸、卸売、小売、医療・福祉が雇用を支え、備前焼、漁業、食、歴史文化が観光と地域ブランドを形づくっている。第三に、事業所数や従業者数、農林業経営体数には減少が見られる。

備前市は単なる「備前焼の町」ではない。一方で、単なる工業都市でもない。土と火から生まれた伝統工芸、耐火物を中心とする製造業、日生の海、商業と観光。異なる産業が地域ごとに重なり合っていることこそ、備前市経済の姿なのである。

統計と画像の出典

※金額は原資料の百万円または万円単位から換算した。割合は公表値または公表値を基に算出し、端数を丸めた。岡山県が2026年8月に修正公表した数値を使用している。